福島第1原発3号機で核燃料の取り出しに使う機器のトラブルが相次いでいますが、その原因が余りにも初歩的なもので、信じられないようなミスの連続というしかありません。
河北新報が「トラブル続く廃炉/初歩的ミスは許されない」とする社説を出しました。
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(社説)トラブル続く廃炉/初歩的ミスは許されない
河北新報 2018年10月8日
東京電力福島第1原発で核燃料の取り出しに使う機器のトラブルが相次いでいる。廃炉工程にも大きく影響しており、東電は改めて事態の深刻さを受け止める必要がある。
トラブルが続いているのは3号機。プールには使用済み514体と未使用52体の核燃料が保管されており、廃炉の工程表では本年度中頃の取り出し開始が予定されていた。
ところが、機器の試運転を始めた今年春以降、不具合や故障が次から次へと発覚している。建屋外への燃料搬出に使うクレーンは5月の制御盤のショートに続き、8月に異常を知らせる警報音が鳴って自動停止した。
プールからつり上げる燃料取扱機も8月、原子力規制庁の検査中に緊急停止し、制御盤につながるケーブルのうち1本に断線が見つかった。9月には他のケーブル11本でも異常が判明。その後もセンサーの故障が発見されている。
東電は年内に機器の総点検を行う予定だ。燃料取り出し開始は少なくとも年明け以降。東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明最高責任者は「年度内の開始は見通せない」と、大きくずれ込む可能性に言及している。
燃料の取り出しは、最難関の「溶融核燃料(デブリ)取り出し」や「汚染水対策」と並ぶ廃炉の重要項目。準備段階でつまずいている現状を見過ごすことはできない。
問題は信じられないようなミスがあったという点だ。5月に見つかったクレーンのショートは出荷時の電圧設定の誤りが原因で、東電も確認を怠っていた。燃料取扱機で異常が分かったケーブルには、部品の組み込み忘れの可能性があるという。
いずれも米国製で、責任の所在があいまいになっていた恐れもあるが、事前に防ぐことができた初歩的なミスと言えるだろう。
原子力規制委員会の更田豊志委員長が「第1原発ならではの困難が立ちふさがって生じたのではない。手抜きにすら見える」と厳しく追及した意味を、東電はかみしめることが大切だ。
規制委は今後、機器を納入した東芝側からも事情を確認する方針。廃炉を着実に進展させていくため、初歩的ミスがどうして起こり、なぜ防げなかったのかを、しっかり検証してほしい。
東電にはトラブルに関する迅速な公表も求めたい。12月までの総点検では、引き続き不具合や故障が判明することが考えられる。そうした問題を過小評価し、公表を遅らせることがあれば、不信感を増幅させることになる。
今年夏には汚染水を処理した水に、除去していたはずの放射性物質が排水基準を超えて残っていたことが明るみになり、批判が高まった。
今後のデブリ取り出しを含め、廃炉作業には不信感の払拭(ふっしょく)が欠かせないことを、関係者は肝に銘じるべきだ。